2010年12月3日金曜日

企業戦略に見る企業人の学び

立教大学大学院ビジネスデザイン研究科の大久保隆弘教授にご登壇いただいています。

シャープの企業戦略の事例をとても興味深く聞いていました。

オンリーワン戦略。とっても有名な話なので、聞いたことはあるかもしれません。ナンバーワンでは無いですと。世の中に無いものを創る、他者からマネをされるものを創り続けるというものです。


液晶テレビが出てくる前は、シャープと言えばブランド力のない家電メーカーでした。松下などと違って、ちょっと安めのテレビとかカセットレコーダーなどの会社だったと思います。電卓は有名でしたが、家電の中では安価な商品なので、ブランドには影響なかったかと思います。


シャープがトップブランドに躍り出たのは、液晶テレビです。亀山モデルというMADE IN JAPANの高品質を売りにしたブランドで、他社のテレビよりも高い値段で売られていました。


でも、今は元気がありません。各社もみんな同じく3Dテレビを発表し、シャープがトップを走っているというイメージはもう昔のこととなってしまいました。世界的に見ても、韓国、中国のメーカーが格安の液晶テレビを出していて、この間、LGのコマーシャルをとうとう日本でもやることになったのかと驚いています。


シャープには、緊プロという戦略に直結した仕組みがありました。緊急にやる必要のあるものについて、プロジェクトリーダーが各部署から指名で人を集めて、社長直結でプロジェクトを推進するという仕組みです。各部署のマネージャーは優秀な人を引き抜かれたくないと思うものですが、拒否権がないという仕組みです。


組織としてみた場合、通常は社長の目に留まらないような若手が緊プロに呼ばれて活躍することで、社長も組織内の優秀な人を把握できるし、成長の機会を与えることも出来ます。


いい仕組みがあったのにも関わらず、なぜ、液晶テレビはだめになってしまったのでしょうか?


サムソンは、現地に溶け込んでその土地にあったものを創るように本社に要求します。このやり方は、エスノグラフィーそのものです。販売店も、ローラー作戦で増やしていき、サムソンが当たり前だと現地の人に思わせてしまいます。見かける回数が多いと、みんなが持っているような気になります。



それに対して、新しく生み出した液晶テレビというものをシャープは有効活用できなかったのかもしれません。緊プロで取上げられるもの=新製品、新開発のもの、は社内でもプライオリティーが高いのですが、それをどのように売るかというものを、少し軽く見ていたような気がします。人が育つのに、緊プロがいい場であったかもしれませんが、新しい物を生み出すことに重きを置くばかりに、売るということを軽視するように学習してしまった結果なのかもしれません。


もちろん、為替の問題、国の政策の違いなど諸条件はありますが、組織内にいると、企業の戦略が何を学んで何をアンラーンするかということに対して大きな影響を与えます。でもそれは、企業の盛衰に直結するということです。


結果としてではあるものの、組織外から学ぶということは、組織内における企業戦略から学ぶことが出来なかったものに対してのポートフォリオの役割をしているのかもしれません。

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